心的外傷後ストレス障害(PTSD)の超越的な治療

兵士を対象にしたある調査では、8週間の瞑想後には症状が半減した。

ウオールストリートジャーナル戦争の傷跡は様々な形で残る。火傷、切り傷、手足の切断など、目に見える傷跡の他にも、目には見えない心理的な傷跡がある。どちらも同じ様に、その人の人生を荒廃させてしまいかねない。心理的な傷を負っている人たちの数は信じがたいほど多い。最近行われた軍の調査によると、アフガニスタンからの帰還兵の20%、すなわち5人に1人が、PTSDを患っているという。

戦闘に関係するPTSDを患っている人たちの多くは、感情の麻痺とうつを同時に経験する。あるいは、強い不安と妄想を交互に経験する。日中には突然、トラウマ的な状況のフラッシュバックが起こる。夜には、眠れなかったり、悪夢を見たりする。そして、朝起きたときには、戦場にいたときのように、ぐっしょりと汗をかいていることが多い。

しかし、PTSDの退役軍人のほとんどは、不名誉への恐れ、効果的な治療の不足、政府の不十分な対策など、様々な理由から十分な治療を受けていない。アメリカ陸軍の参謀次長ピーター・キアレッリ将軍は、最近、次のように認めた。「脳の怪我の治療法は、体の怪我の治療に利用されている進んだ医学に比べると遅れています。」

明らかに、新しい創造的な治療法が必要とされている。TMとして知られている超越瞑想は、その有望な候補である。TMは古代インドのヴェーダの技法であり、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーによって1950年代の後半に西洋に紹介された。1日2回、それぞれ20分ほど、楽に座って目を閉じて、マントラを思う。 特定の宗教、信条、儀式にしたがう必要は全くない。心と体へのTMの効果は、これまでに340以上の査読を受けた論文によって明らかにされている。

最近、デヴィッド・リンチ財団は、イラクやアフガニスタンから傷ついて返ってきた兵士たちにTMを教えるための資金集めのイベントを開催した。私たちは3つの戦争で戦った退役軍人たちから話を聞いた。ジェリー・イェリンは第二次世界大戦の戦闘機パイロットで、任務にしたがって日本へ19回飛行した。ダン・バークスはベトナム戦争で戦った。デヴィッド・ジョージは、「イラクの自由」作戦で戦った。これらの人たちは年齢も戦争体験も異なるが、共通点が二つあった。一つは、三人とも重いPTSDを患っていたこと。もう一つは、三人ともTMから大きな安らぎを得ていたこと。彼らは平和な人生を取り戻し、今では人生を楽しんでいるのである。

これら3人の話から明らかになったのは、病気の症状が彼ら自身だけでなく彼らの家族にも大きな負担になっていたことだ。ジョージ氏の母親は、自分の息子が礼儀正しい青年から、心が荒んだ大酒飲みになってしまった様子をビデオの中で訥々と語っている。母は息子が自殺したり、他人の命を奪うのではないか恐れていた。

ジョージ氏が規則的に瞑想を始めると、全てが変わった。彼の母は、TMが息子の命を救ってくれたと語っていた。

「ジャーナル・オブ・カウンセリング・アンド・デベロップメント」の1985年11月号に発表されたベトナム退役軍人を対象にしたジェイムズ・ブルックスとトマス・スカラノの研究では、従来の心理療法よりもTMのほうが効果的であることが示された。最近では、「ミリタリー・メディスン」の2011年6月号に発表されたイラクとアフガニスタンから還ってきた退役軍人を対象にした予備的研究がある。それによると、TMをわずか8週間続けただけで、PTSDの症状が半減したという。

戦闘に関係したPTSDに対するTMの効果には科学的な根拠がある。PTSDの患者には極度な警戒、不安、過剰な驚きなど過敏な闘争逃走反応が見られるが、それがTMによって緩和されることが数件の研究によって示されている。

さらにTMは、過敏な闘争逃走反応が関与していると思われる高血圧や心臓発作や脳卒中などのリスクを軽減することも分かっている。同様に、TMは神経系の反応を調節するので、それによって、傷ついた退役軍人たちがリラックスして、戦争のトラウマを忘れられるのかもしれない。

TMの効果の仕組みがどうであれ、多くの証拠から次のような結論が得られるだろう。たとえ一部の退役軍人であっても、TMのような簡単で安価なテクニックによって、彼らのPTSDの苦しみが軽減できたのであれば、私たちもそれを試してみる価値はあるだろう。

リンチ氏は映画監督であり、デヴィッド・リンチ財団の設立者である。ローゼンタール博士はジョージタウン大学医学部精神科の臨床教授であり、『Transcendence: Healing and Transformation Through Transcendental Meditation』(Tarcher-Penguin, 2011)(日本語訳は『超越瞑想 癒しと変容』さくら舎)の著者である。

ウオール・ストリート・ジャーナル(2011年7月13日)