古代の聖典には、生命の本質は至福であると記されている
インドに伝わる古代の聖典には、「生命の本質は至福であり、生命は至福から生まれ、至福へと帰る」と記されています。すべての生命は、それ自身の本質である「至福」を求めて、それ自身の源へと戻っていく傾向があります。
例えば、心はいつも幸福を求めています。もっと大きな喜びや満足を求めています。しかし、日常で得られるどのような体験も心を完全に満たすことはできません。なぜなら、心が本当に求めているのは、限られた幸福ではなく、無限の幸福であるからです。それは外側の世界には見つかりません。それは私たちの内側に、心の源にあるものです。
心の源には、無限の幸福の領域があり、そこが超越の領域です。ですから、瞑想して心を内側へと向けることで、心は自動的により大きな幸福に惹かれて、超越へと向かって進んでいきます。超越瞑想は、より大きな幸福を求める心の自然な傾向を利用しているので、全く努力が要らず、効果的なのです。
さて、瞑想中の主観的な経験は毎回違いますが、生理状態を客観的に測定してみると、心が超越するときには、体にも一貫した生理的的変化が起こっていることが分かります。例えば、「幸福ホルモン」と呼ばれるセロトニンが大幅に増大し、ストレスホルモンのコルチゾールや血漿中の乳酸塩が減少します。 Ref.JEVNING, R.; WILSON, A. F.; and DAVIDSON, J. M. Adrenocortical activity during meditation. Hormones and Behavior 10(1): 54–60, 1978. Reduction in Biochemical Index of Stress: Decreased Plasma Cortisol Levels,Ref. BUJATTI, M., and RIEDERER, P. Serotonin, noradrenaline, dopamine metabolites in Transcendental Meditation technique. Journal of Neural Transmission 39: 257–267,1976
幸福ホルモンやストレスホルモンの変化を計測することで、心の幸福の度合いを知ることができる
超越の体験を何度も繰り返すと、ストレスホルモンの減少と幸福ホルモンの増加が定着し、瞑想していないときにもそれが続くようになります。超越瞑想を長期にわたって実践している人たちには、目を見張るような心身の改善が見られますが、こうしたホルモンの変化がその理由の一つと考えられます。
ストレスホルモンは体の中で一つの役割を果たしています。私たちが攻撃を受けたときには、ストレスホルモンが働いて、即座に「闘うか逃げるか」という行動を起こす必要があるからです。しかし、ストレスホルモンが慢性的に多いと、神経系が損なわれ、最終的には病気になります。例えば、コルチゾールの濃度は二型糖尿病や肥満と関係があり、乳酸塩の濃度は高血圧と関係があることが分かっています。
一方、セロトニンは多くの脳機能を制御しています。セロトニンの減少は、うつ、不安、偏頭痛、怒り、アルツハイマー病、睡眠障害、記憶障害、衝動的な行動、依存症など様々な問題と関係していることがわかっています。
セロトニンの濃度を高める薬は、一時的に病気の症状を緩和しますが、問題の真の解決にはなりません。脳の中のセロトニンの減少には、ストレスが大きく影響していることが分かっています。
人間の神経系の正常な機能が健康や幸福をもたらす
基本的に、人間の神経系の正常な機能が、健康と幸福をもたらします。私たちの体はもともと、健康で幸福に生きるように設計されているのです。なぜなら、それが生命の本質だからです。こうした神経系の正常な機能を妨げているのがストレスであり、それとは逆に、神経系の正常な機能を回復するのが超越の体験です。超越とは、内面の深い静寂と幸福の体験です。この体験は幸福ホルモンやストレスホルモンに影響を与え、体の治癒力を高めて、蓄積したストレスを取り除きます。ですから、体は再び正常に機能するようになるのです。